青 果 物 の 流 通 技 術 に 関 す る 研 究
― 調 査 : ニ ラ の 予 冷 施 設 及 び 温 度 条 件 ―
朝 来 壮 一
食 品 産 業 担 当
Freshness Distribution Engineering for Fruits and Vegetables
Precooling Facilities and Temperature Conditions of Chinese Chive
-Shoichi ASAKI
Food Industrial Gr.
要
旨
大 分 県 で は , 従 来 各 産 地 で 個 別 生 産 ・ 出 荷 さ れ て い た ニ ラ を 一 元 化 し , パ ッ キ ン グ セ ン タ ー や 予 令 施 設 の 効
率 的 な 配 置 に よ る 流 通 の 高 度 化 を 図 る 取 り 組 み が 行 わ れ て い る . そ の 拠 点 と な る 集 出 荷 ・ 予 冷 施 設 を コ ー ル ド
チ ェ ー ン 効 率 化 の 視 点 か ら 調 査 し た . そ の 結 果 , コ ー ル ド チ ェ ー ン の 機 能 低 下 に つ な が る 生 産 地 か ら の 高 温 搬
入 や 真 空 予 冷 処 理 の シ ス テ ム 上 の 位 置 付 け な ど コ ー ル ド チ ェ ー ン の 途 切 れ に つ な が る 課 題 が 見 出 さ れ た .
1.
はじめに
ニラは大分県の農産物の中でも重点品目として生産拡
大が期待されているが,生産技術による品質向上対策と
ともに流通体系の効率化・コールドチェーンの強化を課
題としている.中でもニラは低温化を中心に鮮度保持対
策が進められているが,選果場段階でも真空予冷と通風
予冷のシステムが混在するなど,統一されたシステムに
はなっていない.現在県内 3 カ所の集出荷拠点から出荷
されているが,平成 21 年度は,2 カ所に集約して出荷す
るなど効率的な出荷体系の構築を図っている.
そこで,コールドチェーンを前提とするニラの鮮度保
持対策について検討するため,大分県のニラ集出荷拠点
となっている JA 施設(大分市)について温度環境を含む
調査と大阪市場までの輸送温度環境調査をおこなった.
2.
調査方法
2-1 調査時期及び対象
平成 21 年 6 月~8 月に大分市内の JA 拠点施設(H 予冷
・集出荷施設)を実地調査するとともに,ニラの持ち込
み温度及び室温設定等品温に関する調査,大阪市中央卸
売市場までの輸送調査を併せて行った.
2-2 調査方法
集出荷施 設の関係者に聴き取りを行うほか,放射温度
計(SATO 製)で品温及び室温を測定した.また生産者か
ら集出荷施設までの搬入経路の温度及び真空予冷装置の
特性調査には,小型のボタン型データロガー(KN ラボ製
サーモクロン G)を用い,ニラの個別包装及び包装段ボ
ールの内側に貼付して測定した.ニラの還元型アスコル
ビン酸分析は RQFlex 法を用いた.
3.
調査結果及び考察
3-1 JA 予冷施設
3-1-1 施設概要
施設は簡易鉄骨スレート構造で鉄板1枚の非断熱構造
となっている.出入り口は,遮温のためビニールカーテ
ンで遮蔽されているが,窓など開口部があり外部熱の影
響を受けやすい構造となっている.室温は 22℃に設定さ
れた空調機により調節されているが,実測室温は 25.0℃,
RH47%であった.(Fig.1,2)
Fig.1 Preparatory Facilities
Fig.2 Preparatory Room
24
Fig.3 Refrigerated Warehouse
Fig.4 Arrival Temperature (TO branch)
調整室内のニラは,生産者段階で予冷されたものと,
処理されていないものが混在搬入されている.予令され
たニラについてもロット毎に温度のばらつきがあり,実
測では,21.7±1.8℃であった.これらは生産者段階での
冷蔵保管の条件や持ち込み時の輸送形態に差があるため
と考えられた.持ち込み品温を放射温度計で測定したと
ころ Table 1 のとおりであった.
Table 1 Pre-cooling conditions of Chive
Route
Arrival Temp (℃)
Distance (km)
PreVC Cooling
Refrigerator Truck TObranch→ Oita-shi 22.0 3.0 × × HT branch→ Oita-shi 29.0 10.5 ○ × KZ branch→ Oita-shi 24.5 14.0 × × HJ b ranch→ Oita-shi 29.9 28.5 ○ ×
大分市TO地区(22.0℃),HT集荷施設(29.0℃),
大分市KZ地区(24.5℃),HJ集荷施設(29.9℃)の各
地で距離が長いほど,また生産地での 1 次冷蔵処理がな
く,輸送中の保冷対策が施されていないものほど持ち込
み品温が高かった.
距離が 3km 以内の近郊から持ち込まれるものは,生産
地で予冷されており,22℃と比較的低温が保たれている
が,ワゴン等車載エアコンのみで持ち込まれるものは最
高温度 29.9℃であった.H予冷施設で処理されるニラは
22℃~29.9℃までの広い温度範囲で持ち込まれており,
Fig.5 Packing for VC
Fig.6 VC (Vacum Cooler:Yanmer)
真空予冷の開始温度を上昇させる要因と考えられた.
3-1-2 予冷処理
H 予冷施設には平成 17 年 3 月にヤンマー製の真空予冷
装置が更新導入されている.処理対象はニラの他に都市
近郊の大葉や水耕みつばを含んでいるため,処理時間は
個別設定ではなく,統一した設定時間で真空予冷(VC)
されている.処理時間は 40 分で固定運転されており,出
庫時品温による設定ではない.
5 .0 1 0. 0 1 5. 0 2 0. 0 2 5. 0 3 0. 0
1
6
:
0
0
1
6
:
5
0
1
7
:
4
0
1
8
:
3
0
℃
Pa ckage
Box
VC Final VC Start
Target Temp. Real Temp.
Fig.7 Temperature of Chives in VC
Fig.7に6月28 日にVC処理したニラの品温変化を示
した.あらかじめ設定された時間で処理されるため,品
温は,目標温度の 5℃ではなく 17℃で終了している.こ
のニラはその後冷蔵庫で保管されたため,品温は目標温
25
度に到達しているが,処理開始時の品温が高ければ出庫
温度は処理時間が一定であるため,本来の目的温度であ
る 5℃以下に達しないと推定された.
Draft Air Cooling
Vacuum Cooling
Excessive heat load
℃
Time
Fig.8 Cooling method & Excessive heat load
実際に放射温度計で温度を測定した結果,冷却槽搬入
時品温は 27.5℃(3 カ所測定の平均).終了時品温は 1
7.0℃(3 カ所測定の平均)で目標温度の 5℃には到達し
ておらず,データロガーの結果と同様であった.
通風冷却(AC:Draft Air Cooling)と真空冷却(Va
cuum Cooling)の冷却特性を Fig.8 に温度モデルで示し
た.本県のニラには,生産地で収穫後直ちに冷蔵された
も のと常 温で保管 された ものが 混在し て予冷施 設に 搬
入されている.本県のニラはこのように VC 処理される
ものと AC 処理されるものに分かれるが,最終的に目的
温度の 5℃近辺まで冷却される間,ニラには Fig.8 に示
す熱負荷がかかることになる.通風冷却では 5℃達温ま
では 24 時間以上を要するため,その間の VC 処理との熱
負荷の差は大きい.
-10 0 10 20 30 40 50
1 2 3 4 5 6 7 8 9
5℃ 10℃ 20℃ 25℃
day %
Fig.9 Ascorbic Acid of Chives & temperature(2010)
F i g.9 にニラの 各種温 度での品 質の変 化を還元 型ア
スコルビン酸指標で示した.ニラの品質は温度環境によ
る劣化が著しく,5℃と 20℃の中間の 15℃近辺を境に劣
化速度が速くなる.このため,ニラは収穫後のコールド
チェーンの中で,できうる限り 15℃以下を維持するこ
とが重要と考えられる.
また,VCにおいても他の品目と統一されルーチン化さ
れた予冷作業となっているため,現場では時間を固定し
て処理している.本来は対象品目毎,搬入量によって設
定を変えるべきであり,品温が確実に 0~5℃の範囲に設
定すべきである.
翌日出荷品については,真空予冷出庫後,7℃の冷蔵庫
に保管されるため,品温低下も期待できるが,当日に出
荷されるものについては,冷蔵庫に入庫しても数時間後
には出庫することになり,15~17℃前後の品温で出荷さ
れているものもあると推察される.平成 22 年度の調査で
は,大阪市場で回収した VC 予冷及び AC 予冷(Non-VC)
のニラ品質を比較した結果を Table 2 に示した.100g1
0 束の比較の範囲では VC 区の還元型ビタミン C の含量が
やや高い傾向が認められた.
ニラの鮮度保持最適温は 0~5℃とされている.このた
め,真空予冷装置と冷蔵庫の機能を活かした効率的な利
用について保冷庫の温度設定を品温が 5℃以下になるよ
うに設定するなどの改善をする必要がある.
Table 2 Ascorbic Acid of Vacuum cooling Chives
VC Non-VC
24.3mg/100g 21mg/100g
Chive (6/28)
*100g×10samples each *RQFlex analysis
3-1-3 包装機
予冷するニラは,包装後予冷されている.包装は逆ピ
ロー型自動包装機 OMORI 社製により,先端部がトップシ
ールされず溶融切断のみ(密封性なし),ボトムシール
のみの開放包装となっている.センターシールはゴザ目,
ボトムシールは線(ライン)シール.センターシールの
溶着程度は速度に依存するため,接着状態を見て設定す
る方式で 71 包装/分の設定となっている.また VC 処理
するため,包装内空気の膨張で破裂しないように開放包
装としている.
青果物鮮度保持には,低温と併せて包装技術が欠かせ
ないが,開放包装では低酸素・高炭酸ガスの鮮度保持(M
odified Atmosphere:MA)条件とならないため,鮮度保
持上は不利である.近距離流通である程度の低温が保た
れる場合は,開放包装でもそれほど問題はないが,日数
を要する首都圏までの長距離輸送では品質低下の危険性
がある.
3-2 コールドチェーン
前報で積算温度によりコールドチェーンの効率を評価
する考え方を示した.すなわち,鮮度を保つための実用
温度を設定し(15℃)その温度以下で推移する割合を算
出し,その割合が高ければ,コールドチェーンとしての
十分な機能が期待できると評価する.逆に 15℃以上の割
26
合が多ければ逆に機能していないことを意味する.この
考え方で,大分市から大阪中央卸売市場に出荷されるニ
ラの温度変化をみた結果を Fig.10 及び Fig.11 に示した.
Fig.10 に示すように AC 処理では品温は境界温度 15℃以
下になるまで 1 日以上を要しており,選果場持ち込みか
ら 2 日に亘って 15℃~20℃の品質劣化温度帯にあること
がわかる.AC処理区では1日以上の冷却で,品温は15
℃ 以下にな るものの 卸売市 場に着荷 するまで 10 ℃以下
になることはなかった.これには輸送中の保冷車や冷蔵
車両の温度設定も大きく関係するが,こうした車両の冷
凍機の能力は限られており,保冷的な効果しか期待でき
ない.そのため産地で確実に低温にしておく必要がある.
VC 処理区では,VC 処理と同時に品温は 12℃まで低下し
ている.目的温度の 5℃には至っていないが,予冷処理
後は確実に 10℃~15℃の温度帯に維持されるため,品質
劣化の抑制が期待できると考えられた.
0 5 10 15 20 25 30 8 / 1 7 8 / 1 7 8 / 1 7 8 / 1 8 8 / 1 8 8 / 1 8 8 / 1 8 8 / 1 8 8 / 1 9 8 / 1 9 ℃
Fig.10 Temperature during transport (AC)
0 5 1 0 1 5 2 0 2 5 3 0 8 / 1 7 8 / 1 7 8 / 1 7 8 / 1 8 8 / 1 8 8 / 1 8 8 / 1 8 8 / 1 8 8 / 1 9 8 / 1 9 ℃
Fig.11 Temperature during transport (VC)
青果物では,産地で収穫後できるだけ早く低温冷却し
て出荷し,それを低温管理された物流手段で輸送・貯蔵
を行い,品質低下を最小限に抑える.低温は対象によっ
て異なるが,青果物は概ね 10℃前後が実用温度である.
この低温を維持するため温度変化の少ない輸送・貯蔵・
仕分方式などの開発が重要となるが,いわゆるコールド
チェーンの途切れを完全になくすことは困難である.そ
こで現状を正確に把握して,予冷システムの中に VC を適
切に組み込み,鮮度保持包装(MAP)を組み合わせるなど
により,コールドチェーンの途切れにおける温度変化を
最小に抑える工夫が重要と考える.
4.
まとめ
1 ) . 選 果 場 へ の 持 ち 込 み 温 度 は , 地 域 に よ り 異 な り
2 0 ℃ 以 下 で 持 ち 込 ま れ る も の か ら3 0 ℃ 近 い 高 温
で 持 ち 込 ま れ る も の も が あ っ た . 高 温 持 ち 込 み
は 適 正 なV C処 理 に 影 響 す る ほ か ,流 通 過 程 で の
品 質 劣 化 に 影 響 す る .
2 ) . 通 風 式 , 真 空 式 を 問 わ ず , 持 ち 込 み 品 温 が 高 け
れ ば 高 い ほ ど , 予 冷 に か か る 時 間 は 長 く な る .
こ の た め , 低 温 出 庫 を 前 提 と し た 品 温 管 理 を 行
う 必 要 が あ る
3 ) . ニ ラ の 品 質 劣 化 境 界 温 度 は1 5 ℃ と 推 定 さ れ た .
鮮 度 保 持 に は , そ れ 以 下 の 温 度 を 維 持 す る 必 要
が あ る .
4 ) . コ ー ル ド チ ェ ー ン の 途 切 れ に お け る 鮮 度 へ の 影
響 を 最 小 限 に 抑 え る た め に は , 低 温 化 と と も に
鮮 度 保 持 包 装( M A P )を 組 み 合 わ せ ,予 冷 シ ス テ
ム にV Cを 適 切 に 組 み 込 む 必 要 が あ る .
参考文献
1) 朝来壮一:大分県産業科学技術センター平成 21 年度
研究報告,39(2010)
2) 石 井 勝 ・ 大 久 保 増 太 郎 : 園 芸 学 雑 誌 ( J . J a p a n . S o
c . H o r t . S c i . ) 5 2 ( 4 ) : 4 7 6 - 4 8 3 ( 1 9 8 4 )
3) 早 川 昭 他:食 総 研 報 ( R e p t . N a t l . F o o d R e s . I n s t . )
N o . 4 0 . 8 2 - 8 8 ( 1 9 8 2 )
4) 富 沢 知 成 他 : 東 北 農 業 研 究 ( T o h o k u A g r i c . R e s . )
3 7 , 2 5 5 - 2 5 6 ( 1 9 8 5 )
5) 岩 田 隆 : 園 芸 学 雑 誌 ( J . J a p a n . S o c . H o r t . S c i . ) 5
4 ( 1 ) : 1 2 1 - 1 2 5 ( 1 9 8 5 )
6) JA 全農施設住宅部:新版・予冷施設のてびき
BOX℃ Chive℃ Boundary℃ Shipping VC AC Shipping BOX℃ Chive℃ Boundary℃ 27